1924.1.1. - 2005.8.12

 1924年1月1日東京千代田区麹町に生まれる。39年、早稲田実業を中退し、42年に東宝へ撮影助手として入社。45年2月召集、陸軍浜松航空隊の写真班員として中国大陸へ配属される。ここでは主に偵察機の撮影してきた写真の現像を受け持っていた。同年、復員し東宝へ復帰するが、47年、東宝の労働争議により誕生した新東宝の設立に参加、演出部へ籍を移し、渡辺邦男、清水宏、成瀬巳喜男などの助監督に就く。57年『リングの王者・栄光の世界』で監督昇進し、有望な新人として注目を浴びる。続いて、児童向けのプログラム・ピクチャー「スーパージャイアンツ」シリーズを連作。『肉体女優殺し・五人の犯罪者』(57)、『天城心中・天国に結ぶ恋』(58)を経て、『女体桟橋』(58)で石井タッチの本領を発揮、この路線は『白線秘密地帯』(58)に始まるいわゆる“ライン・シリーズ”発展し、猥雑さの中にモダニズム溢れる石井タッチにさらに磨きがかかる。良識派からは「煽情的だ」と非難の的になるが、淀川長治氏などの一部の批評家からは絶賛を浴び、興行的にもヒットを記録する。

 61年、倒産寸前の新東宝を離れ、東映と契約、高倉健との初コンビ作品となる『花と嵐とギャング』を監督。巧みなストーリーテリングにバタくさいモダニズム溢れる演出で、東映アクション映画に新風を吹き込む。以降、東映ギャングものに大きな影響を与えた作品を撮り、東映現代劇の中心的存在となる。その一方、水上勉原作『霧と影』(61)、松本清張原作『黄色い風土』(61)などのミステリーにも冴えを見せる。さらに仁侠映画ブームの火付け役になる『昭和侠客伝』(63)を監督。65年には自らの脚本による『網走番外地』を監督し、ストーリーテリングの巧みさとシャープな映像で大ヒット、シリーズ化され自身の監督で10作、その後、マキノ雅弘ら他の監督にバトンタッチして計18作も作られることになる。主演の高倉健はこのシリーズによって一躍スターダムにのし上がった。

 68年からは『徳川女系図』に始まる東映の“異常性愛路線”を手掛け、良識派からの顰蹙、主演女優の失踪、東映京都撮影所の助監督らによる「低俗映画反対」声明連盟書の突き付けなど、各方面からのバッシングを受けながらも、多数のスキャンダラスなエログロ映画の怪作を連打する。『徳川女刑罰史』(68)はヒット作となり、続く『徳川いれずみ師・責め地獄』(69)は空前絶後の傑作と評価される。その後も、縦横に活躍。千葉真一と組んだ『直撃!地獄拳』(74)、『直撃!地獄拳・大逆転』(74)の2作では、コミカルなクンフー活劇を展開。香港アクション映画に多大な影響を与え、世界中の映画オタクたち(その中にはクエンティン・タランティーノもいる)を熱狂させた。高倉健と菅原文太の二大スター共演による『大脱獄』(75)、岩城滉一の出世作となった暴走族三部作『爆発!暴走族』(75)、『爆発!暴走遊戯』(76)、『暴走の季節』(76)などをを監督するが、『暴力戦士』(79)を最後に劇映画から遠ざかる。

 90年代に入り、『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(69)を始めとする“異常性愛路線”が名画座で上映され、これらが若者の間でカルト的な人気を博し、“キング・オブ・カルト”監督として再評価の機運が盛り上がる。93年、つげ義春原作『ゲンセンカン主人』で14年振りに劇映画に復帰。続く、つげ忠男原作『無頼平野』(95)、つげ義春原作『ねじ式』(98)とつげ兄弟の原作を得ながら、独特の石井ワールドを縦横無尽に展開し、健在ぶりをアピールした。翌99年にはオウム事件や和歌山カレー事件、埼玉幼児連続殺害事件などを真正面から扱った『地獄』を企画、公判中の事件を扱っていることや、当時はまだオウムの脅威に対する不安が強く残っていたことから、周囲からはは中止すべきだとの声も多く挙がり、また予定していたスタッフも恐れをなして逃げてしまうなどのアクシデントに見舞われるも、新たなスタッフを集め自らのプロダクションで作品を完成させる。2001年には『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(69)以来30余年にぶりに江戸川乱歩の世界に挑んだ『盲獣VS一寸法師』を全編DV撮影という新たな試みで完成させるが、上映方式の問題などで一般公開が難航、このまま幻の作品になってしまうのかと危惧されたが、完成から三年を経た2003年無事にロードショー公開された。その後も高倉健主演のギャングものなど複数の作品の企画を暖め、その製作に意欲を燃やしていたが、2005年8月12日、肺癌にて急逝。享年81歳。

  一周忌を前にした2006年8月、大ヒットシリーズ『網走番外地』で縁のある北海道網走市の市営霊園に建立された墓所に埋葬され、また同時に同市「博物館 網走監獄」の敷地内に「映画『網走番外地』撮影地の碑」が建立された。

   
 
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